昨日一日行方をくらましていた阿部は、すっかり元に戻ったどころか、気持ち悪いくらい爽やかな顔で僕を迎えてくれやがった。なんでも、日帰りで北海道まで飛んで、永遠に伸びていそうなアスファルトの道を地平線に向かってダッシュしてきたそうな。アホらし。
「追いかけても追いかけても地平線に近づけない。そのとき俺は悟ったね。こんなデカい地球の上じゃ、俺一人の悩みなんてプランクトン以下なんだってさ。だから話せ。お前の微生物以下の悩みを」
 さらにこう言うものだから、どこから突っ込んでいいかも分からず、仕方なく昨日のことについて説明してみた。ついでに経験値だけは先輩な友人の意見も聞けたら万々歳だ。
「――悪い、そのパターンは俺も想定外だわ。どうしようもない」
「いや、別にいい。どうせそこまで期待はしてなかったし」
 と口では言ってみたものの、答えは愚かヒントすら出してもらえないのでは、もはや完全なるお手上げ状態だ。降参も降参、白旗を振りたくって無条件降伏してやろう。
「ただし、それはお前にとってはいい傾向だ」
「……どういうことだよ。朝から晩まで頭抱えて悩むことのどこがいいって言うんだ」
「全部。結局な、お前は今完全に幸ちゃんにハマってる。どっぷりと。好きなんだよ。好きってのは、要するにそういうこと。誰かに対して強い好奇心を抱く。好奇ってのは、奇妙なほど好きって書くしな。これ、俺の超持論」
「滅茶苦茶恥ずかしい台詞だな……」
 しかし、どこか得体の知れない説得力はあるのものの、いきなり他人から『お前は誰某のことが好きだ』などと指摘されたところで、自覚の持ちようがないのも事実だった。
 知りたいと思うことを好奇心と呼ぶならば、確かに僕は楠木幸に好奇心を抱いていると言えるだろう。ただ、それはあくまで彼女に嫌な思いをさせたくないという考えからであって、恋愛感情とはまた違うのではないだろうか――そういう考えを拭い去ることは出来ない。
 今知るべきは、彼女のことなのだろうか。それとも、僕自身のことなのだろうか。
 それは無限ループか行き止まりだらけの迷路か。
 袋小路を抜け出して、ゴールへ駒を進めるにはどうしたらいい?
 ――フライング気味な蝉の鳴き声が、夏の風と共に僕を撫でる。中途半端な温度と、過剰な湿気を含んだ空気は、まるでぬるま湯のようだった。
「……よし、じゃあちょいと心理テストをしよう」
「心理テスト?」
 いきなり何を言い出すんだ、北海道にまともな精神忘れてきたか。という前に、阿部は人差し指を天に向け、一つ目の問いを放った。
「イエスかノーで、直感で答えろ。考えるな、感じるんだ。第一問。恋愛経験はあるか?」
「……ノー」
 知ってて言ってるだろ……ほっとけ。
 僕の答えか、それとも答えたこと自体に満足なのか、阿部はにやりと笑った。
「第二問。楠木幸と交際することに苦痛を感じるか?」
「ノー」
 だと思う。
「第三問。楠木幸は、お前のことが好きだと思うか?」
「イ……エス」
 ……たぶん。
「第四問。お前は、楠木幸の隣に居て、幸福を感じたことがあるか?」
「……イエス。うん、イエスだ」
 確かめるように、自分に言い聞かせるように。
 昨日あの時、僕は何を思った。思い出せ。
「最後、第五問。お前は、楠木幸が好きか?」


「あの、先輩……授業、始まっちゃいますよ?」
「ああ……」
 昨日と同じ場所、昨日と同じ人の隣で、昨日と同じように空を眺める。
 雲が、ゆっくりと流れていた。
 授業開始を告げるチャイムの音が聞こえる。けれど、体を動かす気が起きなかった。
 そんな僕の様子を見て諦めたのか、楠木さんも同じように腰を下ろし、空を見上げていた。
 さわさわと鳴る木々の葉。控えめな蝉の鳴き声。遠くから聞こえる教師の声。
「僕はさ」
 知りたいことと、言っておきたいことが、ごちゃ混ぜになって、口から漏れた。
「誰かに嫌われることが怖いんだ。嫌われると、嫌なことをされるから。それが怖くて、誰にでもいい顔をしてきた。好かれる必要はない、嫌われなければそれでよかった。おかしいよな、嫌いな奴に露骨な嫌がらせをする奴なんていないって、頭では分かってるのに」
 自然と浮かんだ嘲笑は、はたして誰に向けられたものだったのだろう。
 臆病者の自分か、傷つけては傷つけられていたころの自分か。
「私は、先輩を嫌いになったりはしませんよ」
「うん、それも分かってる。分かってるはずなんだ。でも、やっぱり怖いんだよ。味方だと思ってた奴が、突然掌を返すように裏切る。……そんなことも、あったからかな。軽く、うわべだけで付き合うのはすごい楽だった。それくらいのレベルで嫌われないように振舞うことぐらいなら簡単だし」
 そんな中で、阿部と言う友人の存在は異質以外の何物でもないだろう。
 まぁ、仕方がない。気がつけばあいつは友達だったのだから。
「だから、多分楠木さんが好きになったのは、そんなうわべだけの僕なんだと思う。確かにそれなら、僕は楠木さんを裏切らないよ、絶対に。けれど、それ以上は……僕も保証できない」
「……先輩も、私を裏切るんですか?」
「分からない。努力はするよ。でも、絶対にないとは言い切れない」
 ほんの些細な言葉や仕草も、時には心をえぐる凶器となりうる。例え、放った者に悪意がなくとも。
 この世に完璧な人間など存在しない。人は完璧じゃないから、集団を作る。自分を補ってくれる他人を求める。それもちろん、僕も例外じゃない。
 でも、何故だろう。
 傷つけるのが嫌で、怖くて、彼女にもそうやって接してきたというのに。
 いつの間にかここには、その恐怖を味わってでも、彼女と一緒に居たい僕がいた。
 僕を知ってほしいと、彼女のことを知りたいと、そう思った。
 しかし、彼女の口から出た答えは、僕の気持ちとは違うところにあった。
「……それなら私は、うわべだけでいいです。ずっと、この生ぬるい関係で」
「楠木さんはそれでよくても、僕が我慢できないと思う。僕は楠木さんのことを知りたいし、楠木さんにも僕のことを知ってほしい。初めてなんだ、こんなふうに思ったのは。だから――」
「私は嫌です!」
 今まで聞いたこともなかった彼女の大声に、僕は情けなくもビクついてしまった。
「先輩には、先輩にだけは裏切られたくないんです。やっと、安心してとなりを歩ける人に会えたと思ったのに……先輩にまで裏切られたら、私、もう立ち直れません。傷つられて、あんな痛い思いをするくらいなら――」
 彼女はまっすぐ僕を見る。
 今にも泣き出しそうな、その瞳で。
「先輩に、好きになってもらわなくてもいい!」
 そう言って駆け出した彼女を、僕は追うことが出来なかった。
 ……これもある意味、失恋と言えるのだろうか。
 立ち上がることすらままならず、地べたに尻をつけたまま、ぼんやりと思う。
 どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。こういう結果になることは、見えていたんじゃないのか? 彼女を傷つけてしまうと、分かっていたのではないか?
 せめて、もう少し、器用な人間に生まれたかった。
 そうすれば、彼女を傷つけることも、こんな思いをすることも、上手く回避することが出来ただろう。
 でも、こんな願望は無意味だ。
 僕は、世界中のどこを探しても、この不器用でバカな僕しかいない。
 だったら、このどうしようもない奴でどうにかするしかないじゃないか。
 だが、僕の言いたいことはほとんどぶちまけてしまった。これ以上、彼女に伝えたいことはほとんどない。あとは、彼女のことを知るだけだというのに、肝心の彼女は、離れていってしまった。
 忘れていた。
 誰かに拒絶されるのが、こんなに痛かったことを。


 それでも、その後の僕は自分でも驚くほど冷静だった。
 授業が終わるのを待って、楠木さんのクラスへ行って彼女の所在を確認すると、
「ああ、幸なら調子悪いって言って早退しましたよ」
 とは彼女の友人らしい女子の談。そして礼を言って自分の教室へ戻り、そのままいつも通り授業を受けた。阿部は僕が教室に入ってから出るまで、ずっと寝ていた。
 家へ帰ったら、晩飯まで寝た。母親の呼ぶ声で目を覚まし、もさもさと飯を食べて、また寝た。献立は覚えていない。母さんが何か小言を言っていたようだが、何を言っていたのかも覚えていない。
 そして、気がつけば朝になっていた。
 考えることをやめると、とてつもなく楽だった。
 いつも通り家を出て、学校へ向かう。なにやら起きたときから涼しいと思ったら、今日は見事なまでの曇り空だった。しかも、いつ雨が降り出してもおかしくなさそうな厚さ。
 傘を持ってくればよかったな、と思いつつも、今更引き返すのも面倒だとそのまま歩く。
 教室はいつも通りの様相だったが、なぜか阿部の姿はなかった。
 僕がどんな気分だろうと、生徒が一人欠席しようと、授業は滞りなく進む。
 そして、気がつけば昼休みになっていた。
 普段通りに、真面目に受けていたはずの授業内容は、全く頭に残っていなかった。
 彼女は来るのだろうか、と一応考えてはみたが、結論から言えば、楠木さんは現れなかった。
 いつもの校舎北にも行ってみたが、やはりそこにも彼女の姿はなかった。
 食欲も湧かなかったので、節約の意味も兼ねて昼食は抜いた。
 そしてやはりいつも通り午後の授業もこなし、級友たちと適当な挨拶を交わして教室を後にした。そして、その足でバイト先の書店へと向かう。
 雲は厚さをさらに増し、今にも泣き出しそうな空模様だった。


「あー、とうとう降ってきちゃったねぇ……」
 店長ののんきな声に、僕も店外を見る。ガラス窓の向こうでは、灰色のアスファルトが段々と黒色に染まり始めていた。
「面倒だな……今日、傘忘れたんですよ。帰るまでに止んでくれるといいんですけど」
「うーん、微妙だねぇ。予報じゃ、明日の朝まで雨らしいけど。これから本降りだってね」
「うわ、最悪だ……」
 店長がそんなことを言ったせいか、雨粒は段々と、確実に勢いを増してきている。僕の淡い希望は、叶いそうにもなかった。つくづく神様と言うのは意地悪なものだと思う。
 その雨の影響かどうかは知らないが、店内には立ち読み客すらいない。いつもなら、この時間は雑誌を立ち読みしたり漫画を物色する学生がぽつぽついてもいいものなのだが、どうやら皆、家路を急いでいるらしい。時々外を通る、中学校のステッカーを貼った自転車は、どれも一目散に直進していった。
 基本的に僕の仕事はレジ打ちだ。ということは、買い物客がいなければ仕事は皆無に等しい。
 あまりに暇なので、カウンター周りを軽く雑巾がけしてみた。割と埃がたまっていた。
 埃の山の中に、きらめく十円玉を発見した僕が手を伸ばしたとき、店の自動ドアが開かれる音がした。あわてて頭を上げた。
「いらっしゃいま――」
 営業スマイルが凍りつくのが、自分でも分かった。
 雨に濡れた傘を引っさげて入ってきたのは、私服姿の楠木幸に間違いなかった。これで別人だったら、僕は目玉の親父を作るしかない。
「――せ」
 楠木さんは僕の硬直した笑顔に一瞥をくれると、店の奥へと歩いていった。その先にあるのは参考書のコーナー。そっちのほうに用事があるらしい。
 しかし、僕の記憶が正しければ、彼女がこの店を訪れるのは初めてのはずだ。少なくとも、僕がここに立っている間は。
 それからどれくらいの時間が経ったのか。数分だったかもしれないし、数時間のようにも感じられた。その間に店長はどこかへ消えてしまい、他の客が来ることはなかった。
 ――この時、もう少し僕が注意深ければ、彼女が料理本のコーナーも見ていたことに気付けただろう。
 気がつけば、彼女は、一冊の参考書を手に、僕の目の前に立っていた。
 差し出された参考書を受け取り、値段をレジに打ち込む。
「一二八〇円になります」
「あの、図書券ってまだ使えますか?」
 唐突な質問に、正直戸惑った。店長から教わった接客を必死に思い出しながら、言葉を探した。図書券は販売停止になったけれど、使う分には問題ない。
「大丈夫、だと思います。図書カードは使えませんけど」
「それじゃ、これと、残りを……」
 そう言って、楠木さんはたどたどしい手つきで、専用の封筒から五〇〇円分の図書券を二枚と、財布から残りの分の小銭を出そうとして――
「あっ」
 小さな悲鳴と共に、小銭をぶちまけた。
 どうしようもなく気まずい沈黙が、店内を支配した。
 降りしきる雨の音が、フェードインするように、頭の中に入ってきた。
 ――そして、彼女の目には、涙。
「楠木さん……?」
「……どうして、うまくいかないの……? 私は一生懸命やってるのに、なんで……?」
 落ちた小銭を拾う素振りも見せず、楠木さんはただそこに立ち、嗚咽を漏らした。
「痛いのは嫌なの、誰にも傷つけられたくないの、ただそれだけなのに。だから、誰も傷つけない先輩が好きなのに! その先輩まで、私を傷つけて! 私ががんばればがんばるほど、先輩に好きになってもらうためにがんばるほど、傷つけられるから、好きになってもらわなくてもいい、なんて言ったのに……!」
 あふれる言葉は、まるで夕立の雨のよう。
 そして彼女の痛みは、同時に僕の痛みでもある。
「なのに、先輩が私を好きになってくれないって考えると、すごく悲しいんです。つらいんです! 先輩と笑いながら歩けることと、傷つけられない代わりにちょっと離れて歩くのを天秤秤にかけても、どっちにも傾いてくれない! それどころか、先輩には全部話してしまって、私のことを知ってほしいなんて、そう思う私もいるんです! 自分を晒すのは、相手に武器を与えるようなものなのに、それでも先輩なら、しっかり受け止めてくれて、私にやさしくしてくれるような気がして! でも、やっぱり怖いんです。怖くて、でも好きで、どうしようもないの……!」
 こういうとき、僕は何を言うべきだろう。
 僕は君を傷つけない、と何の保証もない誓い?
 辛かったね、と安っぽい同情?
 いや、どんな言葉も必要ない。
 人を傷つけるための、一番の凶器は何だ?
 言うまでもない。言葉だ。
 時には切り裂き、時には抉り、時には、粉々に破壊する。
 なら、僕の気持ちは、どのようにして伝えればいい?
 ……簡単なこと。
 幸せなら、態度で示せばいいように。
 僕は、カウンター越しに手を伸ばし、彼女の頭を撫でた。
 さらさらの髪の毛は正直非常に触り心地がよく、けれど、片手一つで軽く覆えてしまえそうなほどに、小さな頭蓋だった。
 そして彼女はこの中で、偶然にも、僕と全く同じことを考えていたのだ。
「ごめん、幸。けれど、それでも僕は、君が好きなんだ」
 ああ、ついに言ってしまった。
 言葉は凶器であると同時に、楔でもある。
 放った人間の思いをそこに打ち込み、変えることの出来ない、真実へと昇華させる。
 ……だから僕は、嘘が嫌いだ。虚構を真実にしようとするから、どこかで歪みが生まれて、誰かを傷つける刃へ変貌する。そんなこと、許せるわけがない。
「好きだから、僕のことを知ってほしいと思った。君のことを知りたいと思った。確かにその過程で君を傷つけることは、すごく怖い。その後も、僕が隣にいるだけで君が傷つくことを考えると――とても正気じゃいられなかった。どうしてOKしちゃったのか、なんて最低のことも考えてしまったりもした。そして、昨日幸にああ言われて、本当に痛かった。それなのに、まだ好きなんだよ。楠木幸のことが」
「私も、先輩のことが好きです。でも、それ以上に怖いんです。いつ先輩の心が変わって、私のことを傷つけるんじゃないかって……!」
「……僕は幸が好きで、幸は僕が好き。なら、今はその関係があれば十分じゃないのかな? ……よく、分からないけれど」
 こちとら若葉マーク付だ。だが、だからといって車に乗らなければ、腕は落ちていく一方。今出来る限りの最善を、尽くすしかないのだ。
 そうすれば、いつかは。
「傷つけてしまったら、次は傷つけないようにする。傷つけられたら、次は傷つけられないよう強くなる。……よく言うだろ、一度間違えたところを、二度と間違えないようにすれば、いつか満点を取れるって。なら僕たちも、いつかは満点が取れるんじゃないのかな」
「……そんなの、詭弁です。それに、痛みを取り除くのに痛みを伴うんじゃ、本末転倒もいいところです」
 むくれて反論する姿は可愛らしくて、どうにもプレッシャーが感じられない。
 まだ目尻に涙は残っているものの、もう流れる様子はなかった。
「それは……我慢してくれとしか言いようがないけど」
「結局それですか……それとも、我慢できたら、何かご褒美でもくれるんですか?」
「ご褒美、ねぇ……」
 なるほど、ちょっと子供っぽい感じもするが、確かに妙案ではある。
 ……なら、こんなのはどうだろう?
 彼女の顔を真っ直ぐに見る。
 そして、そんな僕の視線に、彼女が疑問符を浮かべる前に。

 彼女の唇に、僕の唇を重ねた。

 ……正直な話、味だとかやわらかさだとか、一般的に語られるものを感じ取る余裕などなかった。初心者の悲しい性だ。
「これなら我慢できる……かも」
 唇を離すと、少々惚けたような顔で、彼女が言った。
「そ、そう? なら、いいんだけど」
 仕掛けたはずの僕のほうが明らかに動揺している。情けない、けれどどうしようもない。
 そして、彼女は朱のさす頬のまま、笑った。
 うろたえる僕がおかしかったのか。何かの喜びの表現なのか。
 その意図は分からない。
 けれどその笑顔はまさに、雨上がりの晴天の如く、澄み渡っていた。
 窓の外の雨音は、いつの間にか止んでいた。



 青空の下、二人で弁当をつつく。
 さんさんと照りつける太陽は、日に日にその威力を増している。
 今日も暑いとうだる僕の顔が面白いのか、彼女は明るく笑う。
 彼女が、暑くなると弁当が傷みやすくて困ると言うので、僕が腹痛起こしたらその弁当が原因だなと軽口を叩けば、それなら食べてくれなくていいです、と彼女はそっぽを向く。そして結局、僕が謝る羽目になる。
 ――傷つけるのが怖い僕と、傷つけられるのが怖い彼女。
 それはまるで、磁石のNとS。
 対極にありながら、互いに引き合い……必ず、二つで一つであるもの。
 そう言ってみると、僕と彼女が出会うのは必然だったように思える。決定付けられた、運命。
 けれど、それも悪くないと思う。
 この先も、傷つけて、傷つけられて、怯えることもあるだろう。
 けれどいつか、いつか必ず、満点を取ろう。

 僕たちの夏が、これから始まる。








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